ヨガ哲学の小部屋 「スピードの出し過ぎに注意」加藤香耶

ヨガ哲学の小部屋、今週の小話は加藤香耶先生です。
担当クラス:月曜10:00-11:30 OPEN 木曜10:00-11:30 入門 土曜11:00-12:30 OPEN

ヨガの根本経典「バガヴァッド・ギーター」には、次のような言葉があります。

「苦楽、得失、勝敗を平等に見よ」

学校や会社で、結果を出すことが第一優先とされることの多い現代の競争社会において、何事も、素早く、無駄なく行うことが良しとされがちです。そして、スピードを優先するあまりに、もっと早くもっと良い結果をという欲望に振り回されて、物事の本質を見失ってしまうことはありませんか?

たとえば、おいしいと評判のレストランでオーダーした料理がなかなか運ばれてこない時。出来合いの食べ物を買ってすぐに食べられることに慣れている私たちは「まだかなあ…」としびれを切らしてしまうかもしれません。心をこめて丁寧に作られた食事こそ価値があるとわかっていながら、つい急いてしまえば、私たち自身が消耗するだけです。速さにばかり気を取られて視野が狭くなれば、せっかくのお料理の美味しさも楽しむ余裕もなくなり、美味しさも半減してしまうことでしょう。結果ばかりに捕らわれて息切れをしてしまわないように、視野を広げ、目の前で起こるできごとを平等に受け入れていきましょう、バガヴァッド・ギーターはそう説いているのです。

私は平日、リラヨガ・インスティテュートのある学芸大学まで車で行っています。世田谷や目黒など、交通量の多い場所を通過するので、なるべく混まない道路を見つけるべく数か月かけて抜け道を探しました。結果、いつでも渋滞知らずでスムーズに通勤退勤できるようになりました。先月のある日、いつもと同じようにその抜け道を使って帰る途中で、通行止めの看板に行く手を阻まれました。仕方なく来た道を戻ると、普段は避けて通る大きな国道にぶつかりました。右に曲がれば自宅のある川崎方面ですが、左折しかできない場所でした。またまた仕方なく左折をすると、その国道が、とんでもなく混んでいます。どこかで右折か左折をして川崎に向かいたいのに、まったく動かなくなってしまいました。子どもたちを迎えに行かなければならないのに、あまりの渋滞で間に合いそうもありません。

その日は娘の誕生日の前日で、早く帰って翌日のための買い出しをしたいのに…と徐々に焦り始めました。小学生の息子を迎えに行き、次に娘が待つ保育園へ向かうと駐車スペースが満車です。今日はとにかくツイていない!またもや焦りながら少し離れたコンビニに停めると、息子が「お母さんの迎えが遅かったから、おやつを食べそびれた」という理由で怒り始めました。「今日は急いでるから我慢して…」と言いかけると、息子は半べそをかきはじめました。子どもにとっておやつ抜きは一大事なのだ…と気づいた私は、既に1時間近くロスしているのだし、それほど急いで娘を迎えに行ったところで何も変わらないかもしれないと、息子におやつを買い与え、自分にはコーヒーを買って、ボーっとカーラジオを聴いていました。いつも聴いているそのラジオ番組は、リスナーがリアルタイムで聴きたい曲をリクエストできるという売りがあります。SNSのtwitterを使ってのリクエストはしたことがありましたが、その日は、その番組が電話でもリクエストを受け付けているということに気づきました。DJがアナウンスするその番号に遊び半分で電話をかけてみると、なんと繋がりました。自分で電話をしておきながら、多くの人がかけているはずだから、繋がるわけがないと思っていたので、ラジオから聴こえてくるはずの声が携帯電話の向こうから聴こえてきて飛び上がるほど驚きました。そのまま番組に声だけ出演し、DJの方とおしゃべりをしたり聴きたい曲をリクエストしたりして、あっという間に数分が過ぎました。

「今のは、なんだったのだろう?」

とにかく空いている道で早く帰って、子どもの迎えにも早く早くと、とにかくスピーディーにミッションをこなすことばかり考えていましたが、ふと歩みをゆるめて辺りを見回してみれば、思いがけず面白い出来事も起こるものです。「お母さん誰に電話したの?」浮足立った私の様子を見ていた息子も、ニコニコしています。急いでばかりで眉間に皺が寄っていれば、どれだけ誕生日パーティーの準備をきちんと整えたところで、楽しい時間が過ごせなかったことでしょう。思わぬラジオ出演で気持ちが緩み、和やかにその日の後半を過ごしました。慌ただしく過ぎる毎日の中で、望まない現実にばかり意識を向けていれば、苦しいことしか起きていないように感じることでしょう。つらいことばかりが続くと感じるときは、ほんの少し歩みをゆるめて、あたりの景色を見渡してみましょう。きっと思いもよらない、素晴らしい景色が目に飛び込んでくるはずです。

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香耶先生、愛車と一緒に。

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